選手の未来を守れ!!股関節痛の原因とその鑑別法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

〇〇さん、相談があるのですが・・・
「最近、練習後に突然股関節が痛くなるんですが、どうしたらいいですか」
「試合後から徐々に付け根に痛みが出てきたんだけど、どうしたらいいですか」と選手から相談された経験ありませんか?
スポーツ現場では、足首や膝の怪我の頻度と比較すると遭遇する機会が少ない「股関節痛」ですが、痛めた選手にとってあなたは頼りのトレーナーです。

そんな時、あなたならどんな対応しますか?

今回は、スポーツ現場で遭遇することの多い股関節痛の原因についてご説明していきます。
しかし、原因はいくつか考えられ、これという原因を特定するのが難しいのが実情。
原因を特定するためには、情報収集→仮説を立てて、検証→その人にあった対策この流れでやると選手にあった対策がとれます。

以下でそのステップを紹介していきます。

Step1 原因を把握する上で最も重要なことは情報収集

選手が痛みを訴えてきた時に、まずあなたならどのように判断していきますか?
「どれ、見せてみろ?ここ痛いか?」と触れて評価する方
「アイシングで様子みてみようか」と対応する方、対応は様々でしょう。

しかし、ここはまずしっかりと選手から情報収集してみてください?

「いや、そんなに時間をかけていられない」
「現場ではスピードが大事なんだよ!」
という声も現場から聞こえてきそうですが、あなたのその判断が良くも悪くも選手生命を左右することを考えれば、出来る限り的確な判断能力を身につける必要があります。

① まずは”痛めたきっかけの有無”を確認する

223-7

 痛めた組織鑑別をしていく前に、まず重要なことは「痛めたきっかけの有無」を聞くことです。当たり前のことですが、痛めたエピソードから損傷される組織も絞りやすくなります。

「接触した」「ぶつけた」など明らかな”きっかけがある”場合

組織に対して一回に加わる外力が大きいことが多く、骨折や靭帯断裂など組織損傷の度合いは大きくなり、緊急に対応する必要がある可能性が非常に高くなります。この場合、骨折/脱臼/腱損傷などを疑う。

「非接触」「練習していて段々と」など明らかな”きっかけがない”場合

組織に対して加わる外力は小さいのですが、同じ組織に繰り返されるストレスが蓄積された結果、痛みとなって発症する場合が多いです。この場合、組織損傷の度合いは小さく現場で対応できることが多いです。この場合、筋損傷/鼠径部痛症候群(股関節)/局所以外の部位などオーバーユースに関連していることが多い。

このように、きっかけの有無を聴取するだけで明確な対処の一助となります。

② 組織の損傷度合いを痛みの質から把握する

  • 「じっとしてても痛い」などの安静時痛
    局所に炎症が生じている場合、言い換えると組織損傷がある可能性があります。この場合は、運動を中止する必要があります。
  • 「ある格好で痛い」「捻ったら痛い」などの運動時痛(ⅰ)
    安静時痛とは異なり痛みを誘発する格好があり、関連する組織にストレス(負荷)が生じた場合に痛みを訴えます。ここで、安静時痛と異なる点は、この場合は組織損傷がないという点です。また、一度のストレスで痛みが誘発されるという点も非常に重要なポイントです。
  • 「動いているとだんだんと痛くなる」などの運動時痛(ⅱ)
    運動時痛の中でもよくある訴えです。特に「試合の後半にかけて」や「プレーし始めてから徐々に」などの訴えは、オーバーユース(過用:使いすぎ)が原因です。先ほどの運動時痛(ⅰ)と異なる点は、繰り返されるストレスによって痛みが生じるという点です。

③ 痛みの発生場所は関節内?それとも関節外?

次は痛みを出す部位の絞り込みをしていきます。
ここで、重要なことが痛みを生じている場所が“関節の内なのか?“関節の外なのか?ということです。
ちなみに「関節内」とは、関節包に包まれた部分を指します。痛みを出す可能性のある組織は、関節軟骨/関節唇/などです。

具体的には・・・
・関節軟骨:大腿骨頭/臼蓋
・関節唇
・関節包 

一方、「関節外」で痛みを出す可能性のある組織は筋肉//靭帯(一部関節内もありますが)//その他があります。

具体的には・・・
・筋肉/腱:股関節内転筋群や股関節屈筋群
・靭帯:坐骨大腿靭帯や、恥骨大腿靭帯
・骨:大腿骨頸部/恥骨(下枝)

とはいっても関節内・関節外かどうか大まかには想像出来ても、もっと具体的に痛みの原因を探りたい場合はどうするか?

④組織特性を応用した鑑別方法

それは、組織特性を活かして鑑別するということです。     

例えば、「膝の靭帯が切れているかもしれない!!」そんな場合、不安定性テストをしますよね。これは、”靭帯がある一定の範囲まで伸ばされると緊張が高まり制動する役割”を応用した鑑別法ですね。臨床現場では、一般的に〇〇テストや〇〇法など様々ありますが、これらの組織特性やバイオメカニクスを応用したものになります。
ですので、組織鑑別を行う上でもっとも重要となるのが、”靭帯は伸ばされると痛みが出る”や、軟骨下骨は圧迫されると痛みがでるなどの「組織特性を知る」ことなのです。

組織特性を知れば〇〇テストや〇〇法の本質が理解できるようになり、その他の関節にも応用できます。
伸ばされると痛い組織(伸長ストレス)や、圧迫されると痛い組織(圧迫ストレス)、捻られると痛い組織(捻転ストレス)、ズレると痛い組織(剪断ストレス)といった具合に、組織にはある一定の負荷で疼痛が誘発されます。これらを応用し、鑑別していくことが重要となります(表1)

%e7%b5%84%e7%b9%94%e9%91%91%e5%88%a5

このように、問診を通して得られた情報だけでも、痛みの原因を探ることができ、ある程度までの怪我を絞り込むことができます。この判断が明確になれば、現場で対応できる状態か?病院へ連れて行くか?の判断に迷いがなくなり、選手にとって信頼のおけるトレーナーに一歩近づくのではないでしょうか?

そして、さらに明確な判断をもってもらうためにもう一つ大事なことをお伝えします。

それは、運動器疾患以外も疑ってみるということです。

Red flag 見落とし厳禁!このキーワードには気をつけろ!!

問診の情報には、決して見逃してはいけないサインがあります。
それは、前項でも述べた安静時痛組織破壊あり(炎症)です。

ぶつかった、打ったなどのエピソードがあれば、疑いの目を向けることが多いですが、痛めたきっかけがない(外傷なし)のに痛いというのは、何かおかしいぞと疑ってみてください。
その背景に隠れているのは、ばい菌による尿路系感染によるものや鼠径ヘルニアなどの外科的疾患悪性腫瘍などの可能性が潜んでいます。現場で出会う機会は非常に少ないですが、対応できない症状を知ることで先入観に囚われず、広い視野をもって対応にあたることが出来ます。

ここまで、選手の訴えから「今の状態を把握する」することで、痛みの原因となる組織を絞り込み、現場で対応するべきか?病院へ連れて行くべきか?を適切に判断することが重要であると述べてきました。では、次項より鑑別の精度を上げていく方法をお伝えしていきます。

Step2 仮説を検証  股関節痛の組織鑑別に役立つテスト

 問診によって損傷程度や、傷めた組織を探ることが出来るようになってきたと思います。では、予想された組織の中で、より優先順位をつけるにはどうしたらよいでしょうか?

それは、股関節疾患特有のテスト(スペシャルテスト)を併用するということです。

そうすることで、損傷組織を特定しやすくなる可能性が高くなり疼痛部位の優先順位が付けれるようになります。逆転の発想ですが、消去法としても用いることもでき鑑別の精度を上げる方法です。

2−1.関節内病変の鑑別にはこのテスト!!

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-03-01-54-03

①前方インピンジメントテスト
鑑別組織:股関節唇(前上方)
<方法>
股関節屈曲90度もしくは最大屈曲位で他動的に股関節内転、内旋させる。
<陽性所見>
鼠径部の疼痛が誘発された場合(圧縮負荷を用いた検査)
※感度と得意度:感度100〜75% 特異度 43%

 

 

② FABER(Flexion abduction external rotation)テスト patrick-test-or-faber-test
  Patrick test(パトリックテスト)
鑑別組織:関節唇(前上方)
<方法>
背臥位にて検査側の腓骨外果を非検査側の脛骨上に乗せるように股関節屈曲、外転、外旋させる検査
<陽性所見>
脛骨結節から診察台の高さの健患差鼠径部、股関節前内側面の疼痛出現
※感度と特異度:感度41〜71% 特異度 100%(特異度の報告は少ない)

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-03-01-53-42

③後方インピンジメントテスト
組織鑑別:関節唇(後方)
<方法>
下肢をベッドからはみ出させた背臥位にて股関節最大伸展位とし、検者が他動的に股関節を外旋外転させる。
<陽性所見>
鼠径深部の疼痛誘発
※感度と特異度:報告なし

 

 

2−2.関節外病変の鑑別にはこのテスト!!

Tenderness  圧痛(押すと痛い)

  • 特に多いスカルパ三角:鼠径靭帯/縫工筋/長内転筋に囲まれた三角形
Scarpa三角とは?

上前腸骨棘と恥骨結節を2頂点とする逆三角形として触知され、大腿骨頭が同三角形内に位置する。

  • 各筋の付着部(起始部/停止部)
    股関節屈筋群(腸腰筋・大腿直筋)
    股関節伸筋群(大殿筋・大腿二頭筋・半腱半膜様筋)
    股関節外転筋(中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋)
    股関節内転筋群(恥骨筋・長内転筋・短内転筋・大内転筋・薄筋)
    回旋筋群(深層外旋六筋・中殿筋・縫工筋・大腿筋膜張筋)
  • 骨周辺の滑液包炎:大転子滑液包・坐骨滑液包・腸恥滑液包など

3.まとめ

今回、股関節痛の原因の見分け方について解説してきました。
現場には特殊な機器も無ければ、すぐ相談できる臨床医がいる訳でもない。その為、スポーツ現場でトレーナーが担う役割は非常に重要です。そして、対応にあたるトレーナーの判断スキルの差が選手生命を左右する可能性もあります。応急処置のスキル、テーピングのスキル、どれも大事です。

しかし、まず今の選手の状態が現場で対応できるか?出来ないか?を判断でき、かつその原因となる組織を把握し、対応・対処にあたることが”信頼のおけるトレーナー”への一歩ではないでしょうか。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSで最新情報をチェック

コメントを残す