PT必見!腓骨神経麻痺のリハビリで結果を出すために必要な3つの視点

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入院患者さんにおいて発生させたくない、絶対に予防したいものの一つ。
それは腓骨神経麻痺!!
長期臥床位での不良肢位、股関節・膝関節受傷または術後、ギプスの持続圧迫、下肢牽引など医原性での発生リスクが高いといわれている腓骨神経麻痺。
予防には努めているし、理解しているが、実際に発生してしまった。おこらないことを前提に管理しているため、中々現場でも診たことがない人も多いのではないでしょうか?
そんなときのためにお役立ていただければと思います。

1.ひとあじ違う!!腓骨神経麻痺のリハビリについて

漫然と麻痺の状態を放置すれば、筋の変性が進行し、十分な機能回復が望めなくなるのが腓骨神経麻痺(末梢神経障害)です。リハビリの主な目的は、
・関節拘縮の防止・改善
・麻痺筋萎縮の防止・改善
・疼痛コントロール

・ADL(日常生活動作)・パフォーマンスの改善
これらの項目のうち、なにを主体にアプローチするかは、障害の程度や受傷、手術からの期間によって異なってきます。

1-1 運動療法:神経スライドストレッチとは?

まずは運動療法についてです。今回は腓骨神経麻痺において頻度の高い足関節の背屈制限についてお話しします。
足関節の背屈筋が麻痺をおこし、足関節背屈位をとる頻度、活動内での可動範囲が少なくなり、不動状態(日常的に活動はしているが、局所という意味です)がおこってきます。不動の状態が続くほど、局所の間質液に動きがみられず、循環は悪くなり、栄養供給が減少してしまい、組織の萎縮、癒着、繊維化がおこっていくことが考えられます。

ここで問題となるのはターゲットの組織鑑別が重要となってきます。

筋肉・筋膜・皮膚・靭帯・関節包・距腿関節のすべり・遠位脛腓関節・背屈時の腓骨の上方への動きの低下など様々な要因の仮説がたてられますが、
その中でも今回は神経に対するアプローチ(神経ストレッチ・神経スライド)についてご紹介したいと思います。
みなさん、魚を食べる際に背骨のところをわって、つーっとでてくるやわらかく弾力がある骨みたいなものがありますよね。
あれが神経です。神経はやわらかく、柔軟性に富んでいます。そのため、比較的すぐに柔軟性をもどせる組織でもあります。また筋膜、筋肉の柔軟性がおちると、神経もスライドしにくくなる(柔軟性の低下)ことがあります。
恥ずかしながら、神経に対してアプローチできるということが理解できていなかった私にとっては、解釈をするまでに時間がかかりました。
ただ、実際に体験してみると、非常に即効性があり、筋のストレッチとはまた違う感覚になることがよくわかります。また、実際の患者さん、クライアントさんは過敏に反応しやすいため、より神経へのアプローチの際には負荷量、伸張具合も考慮する必要があります。
軟部組織ごとにアプローチ方法を変えることができれば、より前後での変化もしやすいため、仮説を検証することが具体化されるため、非常に効率が良いと思います。
この動画は腓骨神経の分岐もとである坐骨神経のスライド、ストレッチです。

もちろん、関節可動域の確保のみではなく、神経筋再教育訓練や感覚入力訓練、動作訓練も行い、目的とする動き、パフォーマンス向上へとつなげていきます。

1-2 物理療法ついて

神経麻痺に対しては電気治療が主に用いられています。
その目的としては、
①除痛効果
②局所・全身の循環状態改善
③筋収縮の誘発
④感覚入力

などがあります。

実施するにあたり、ただ、麻痺筋にセッティングし、行うだけではもったいないです。
もちろん麻痺している筋肉に対し、行うことは基本とされています。
では、こうゆう考えはどうでしょうか。
さらに、その神経をつかさどっている、脊柱部にも刺激を入れることができれば、さらなる局所の循環状態の改善につながります。
また同部位の運動/感覚神経に関連している自律神経部にもアプローチできればさらなる効果、ターゲットにしている問題点へのアプローチへとつながることが考えられます。
 除痛目的であれば、痛みに耐えうるぎりぎりの刺激の強さのほうが痛みの閾値をあげられる効果があり、
感覚入力目的であれば、認識できるぎりぎりの刺激の強さで促したり、
自律神経系の促し目的であれば、とにかく気持ちよい刺激の強さで行い、リラックスさせたほうがより目的にそった治療を促すことができたり
と物理療法でも、促したい治療目的により、刺激の強さ、当てる場所など、引き出しを多くもてるほうが患者さん、クライアントさんのためになりますよね。

http://sdynamics.co.jp/protechno/

1-3 装具療法ついて

下垂足のまま歩行すると、足をつまづいたり、捻挫のリスクが高まります。
そのため、足関節用装具の装着やギプス固定をする事もあります。
オルトップやSHBといった装具が一般的に処方されます。

https://www.p-supply.co.jp/products/9

参考内容 オランダ徒手療法 基礎コース授業内容
昨今、様々なアプローチ、治療がありますよね。
実際、患者さん、クライアントさんが良くなる・パフォーマンスがあがれば、徒手でも、物理療法でもコーチングでも何を選択しても良いと思います。

2. 知って納得!リハビリで使える神経損傷の種類と治癒期間

患者さん、クライアントさんの治療を行うにあたり、どのくらいの期間で治るのか?という質問は、よくある質問のひとつではないでしょうか?
そのときに、まず自分自身が軟部組織ごとの治癒期間を理解できているかということが重要となってきます。反対にここを理解できていないとリハビリにもうまくつながらないと思います。

①一過性神経伝導障害(ニューラプラキシア)
この状態の障害では軸索の連続性は保たれており、軸索の変性もありません。したがって、障害部位の遠位で神経に電気刺激を与えると、その神経の末梢の支配筋が収縮します。圧迫部位における伝導ブロックは、その原因が取り除かれた場合、数週から数ヶ月で回復するといわれています。ちなみに正座やあぐら座位後の一時的な圧迫によるしびれ、運動障害も一過性神経伝導障害にあたります。この程度の圧迫であれば数分程度で落ち着いてきますよね。
この障害では神経線維に局所的な髄鞘の損傷がおこるがワーラー変性には至らず、障害部位は自然に修復されます。また太い神経線維は細い神経線維に比べ、易損傷性です。その原因は圧迫が神経に加わった場合、太い繊維がより変形しやすいことによると考えられます。このような理由でニューラプラキシアでは神経幹に含まれる神経線維の全てが必ずしも麻痺するわけではないということです。すなわち運動麻痺が存在しても知覚と自律神経の機能は保たれていることがあります。

②軸索断裂(アクソノトメーシス)
軸索断裂(アクソノトメーシス)は、神経に対する強い圧迫や牽引により生じる神経障害です。
アクソノトメーシスでは軸索の連続性が損なわれワーラー変性がおこります。しかしシュワン管は障害を受けず、神経幹の連続性も保たれています。運動、知覚および自律神経は完全麻痺を呈します。
アクソノトメーシスでは、神経再生のための経路であるシュワン管が残存しているため、再生神経線維はそれぞれ元の終末より1日1~4mm(文献により差異あり)の速度で到達し、再生するといわれています。回復の遅い場合には時に神経剥離術を必要とする場合があります。

③神経断裂(ニューロトメーシス)
軸索の連続性のみならず、神経上膜、周膜、内膜を含めた神経幹の連続性が絶たれている状態です。アクソノトメーシスと同様に運動、知覚および自律神経は完全麻痺、支配筋の萎縮と変性反応、障害部位の末梢における神経伝導性の消失を生じます。この障害では自然回復が期待できないため、手術による修復が必要です。手術の種類は神経剥離術・神経縫合術・神経移行術・機能再建術などがあります。

治癒期間は数分~半年、年単位と損傷程度により幅があります。
予後の評価方法のひとつとして、神経の損傷位置からその神経の支配している筋までの距離を測り、1日1mm再生するとして自然回復の日数を図るのも目安としてあります。
そのほかにも、筋電図バイオフィードバックや神経伝導速度検査、Tinels sign検査などで評価することにより、具体的に経過を把握することができます。

参考文献:運動器障害理学療法学Ⅰ(15レクチャーシリーズ)
図解 理学療法技術ガイド 理学療法臨床の場で必ず役立つ実践すべて

3.腓骨神経麻痺ってなおるの?

腓骨神経麻痺は末梢神経障害のひとつです。
腓骨神経麻痺ってなおるの?

はい!!人には自己治癒能力があるため、基本的には治ります。

…ただし、受傷機転での損傷の程度により、神経が断裂(切れている状態)していれば手術が必要な場合があります。

原因もさまざまですが、簡潔にお伝えすると以下のようになります。
●開放創に伴う損傷
切創、裂創、挫滅創、射創があります。
●閉鎖性の損傷
・骨折の断端による神経損傷
・不適当なギプス固定や副子固定、弾性ストッキングなどでの圧迫により生じる医原性のもの
・不良肢位による神経の圧迫
・膝深屈曲位持続(蹲踞、しゃがみこみ姿勢)
・出血をとめる目的で用いた圧迫帯による神経圧迫
・異常な骨隆起、ガングリオン、神経の近傍に発生した腫瘍、動脈瘤などによっても神経が圧迫
・末梢神経障害をきたす疾患(糖尿病・アルコール多飲・ビタミン欠乏症・ギラン・バレー症候群・多発性ニュロパチー)
などが原因として挙げられます。

医療・介護現場では上記の「医原性による発生を防止する」ということは大前提で行われていると思います。
そして、防止するためには、やはりどのように走行しているのか、解剖学の知識が必要となってきます。
さて、腓骨神経の走行について再確認してみます。

腓骨神経は坐骨神経(L4~S3)から脛骨神経(L4~S3)と総腓骨神経(L4~S2)へと枝分かれし、さらに総腓骨神経から浅腓骨神経(L4~S2)、深腓骨神経(L4~S2)へと続いています。
浅腓骨神経(L4~S2)の支配筋は長腓骨筋、短腓骨筋となっていて、主に足関節外反(足裏が地面についている状態から小指側が床から離れる方向)の動きです。感覚神経は下腿外側から足背の比較的大きな範囲です。深腓骨神経(L4~S2)の支配筋は前脛骨筋、長母趾伸筋、第三腓骨筋、長趾伸筋および短趾伸筋となっていて、主に足関節背屈(足首を上に反らす方向)の動きです。感覚神経は第1、2足趾間背側部の知覚も支配しています。
  腓骨神経は皮下浅層でかつ骨の直上を走行している部位があり、保護する軟部組織が少ないため圧迫による神経損傷をきたしやすく、また脛骨神経に比べて筋内への入り口で膜様組織に固定されているため、機械的刺激に対して脆弱です。さらに虚血になりやすく、障害を起こしやすいことも知られています。

  
               
引用画像:ヒューマン・アナトミー・アトラス2017エディション

次に症状としては、
①足関節背屈筋群の弛緩性麻痺・筋出力低下
いわゆる下垂足は総腓骨神経麻痺の典型的な症状です。
②触・温・痛覚などの知覚障害や知覚異常
知覚には触覚、痛覚、温冷覚および深部感覚のほか、骨膜や関節包に存在する知覚神経終末の圧迫や伸張刺激に応じて合成されて生じる四肢の位置感覚があります。完全な末梢神経断裂においては、支配領域の皮膚は痛覚脱失、知覚脱失となります。
③知覚障害領域の発汗、血管運動、栄養障害などの自律神経障害
1.発汗異常
末梢神経には交感神経線維も含まれているため、その伝導障害により皮膚に存在する汗腺からの発汗が停止します。発汗停止の領域は知覚障害領域と一致します。
損傷部を鑑別するのにこの病態を利用して発汗機能検査が行われます。
2.血管運動障害
末梢神経の切断により交感神経の支配が剥奪されると、その領域の血管は著しく拡張し、皮膚は紅潮して、皮膚温が上昇します。この現象は神経損傷後に起こるもので、熱感と同時に、発汗が停止して乾燥します。慢性期では皮膚温度が低下することもあります。
3.栄養障害
損傷後、数週間が経過すると、皮膚は萎縮し、薄く光沢を帯び、角質層の割合が増えてカサカサになります。皮下の脂肪組織、結合組織、骨も萎縮します。
④合併症としてのCRPSなど

上記症状により、歩行中に足がつまづいたり、足関節の捻挫、転倒につながる可能性もあります。何とか二次的な怪我は予防したいですよね。

ーまとめー

・腓骨神経は保護する軟部組織が少ないため圧迫による神経損傷をきたしやすい。
・治癒期間は数分~半年、年単位と損傷程度により幅がある
・神経は柔軟性に富んでいるため、介入による即時効果がある(ただし、敏感なため十分注意が必要)
・運動/感覚神経のみならず、自律神経も考慮しながら介入することが重要

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