膝の将来はあなた次第!!半月板損傷の原因と各治療法のメリット・デメリット

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年末年始は各種スポーツ競技の話題で大盛り上がりでしたね。特にラグビーやサッカー、駅伝は各年代のアスリートが熱き戦いを繰り広げ、新年早々スポーツ観戦に大忙しでした。
さて、そんな活躍しているアスリートがいる一方で、怪我や故障で涙した選手もいます。
その中でもサッカーやラグビーにおいて多いとされる「半月板損傷」は膝の故障の上位を占めます

最近のニュースでは、インテルの長友選手や少し前ですが本田選手もこの怪我に悩まされた印象がある怪我でもあります。

そこで、今回は「半月板損傷」について治療方針や各治療法のメリット・デメリットにフォーカスを当て解説していきたいと思います。

1.半月板損傷とは?

半月板は、膝関節を構成する大腿骨と脛骨の間に位置する軟部組織です。

             

(引用図:坂井建雄 プロメテウス解剖学アトラス解剖学総論/運動器系 第2版 医学書院)

この半月板は、クッションの役割を果たすことで骨表面上にある軟骨は守られています。

ですが、サッカーなどの膝を酷使するような運動ではその半月板が裂けたり、欠損したりすることで、膝痛の原因になります。一般的にはスポーツでの外傷が多いイメージですが、年齢を重ね半月板自体が脆くなる(このことを変性と言います)と日常生活程度の負荷でも損傷してしまうこともあります。

半月板損傷を経験した方からは「膝を捻った」などのエピソードは典型例です。

膝関節は人が生きてく上で常に体重を支えており、飛んだり跳ねたりすれば、体重の何倍もの負荷がかかります。その為、半月板は人体にとって重要な組織なのです。しかし、半月板の機能はクッション作用以外にもあります。これから半月板の具体的な機能について触れていきましょう。

11.半月板の機能と役割とは?

半月板は前述した通り骨同士の間にあるクッションの役割をしますが、膝が円滑に屈伸できるように様々な機能を持っています。これから、その機能についてご紹介していきます。

関節面の適合性を高める役割

ご存知な方も多いと思いますが、関節構造は基本的に凹と凸の関係から成ります。しかし、膝関節においては内側は凹と凸ですが、外側は凸と凸で適合性が悪い構造です。その為、その間にある半月板によって補われています。

荷重に対する緩衝作用(クッション)

膝は時には何十倍の負荷がかかります。その為、骨同士が衝突してしまうと骨折したり、軟骨損傷したりする恐れがあります。しかし、半月板があるおかげで、それらの衝撃を緩衝することで守ってくれているのです。しかし、半月板が耐えきれない負荷の場合に損傷が生じます。

膝関節における荷重面の拡大と安定性の確保

膝関節は医学的には屈曲130°/伸展0°の可動性を有します。日本人であれば“正座”という習慣があり、それ以上の膝の動きを要求され、目一杯に膝を曲げ伸ばししなければなりません。そこで重要となるのが、半月板です。半月板は関節の動きに伴いその位置を変え、関節の適合性を維持します。つまり、静的な安定性だけでなく、動的な安定性にも関係します。
以上のことからも分かるように半月板は膝にとって無くてはならない存在だということは一目瞭然です。

しかし、1980年代では“半月板は機能のない関節内遺物”として認識されており、手術によって全摘(全て摘出)されていた時代もあったのです。このような歴史を知ると医学の進歩によって今があるのだと痛感させられますね。
ここまでは、半月板の役割や機能に関して述べてきましたが、実際半月板を損傷するとどのような症状がでるかを解説していきます。 

12.半月板損傷の典型症状

半月板損傷時の症状は、自覚症状他覚症状に分かれます。

半月板損傷時の「自覚症状」

①膝関節に痛みがある

②膝の屈伸などの運動時に引っかかり感がある(キャッチング)

③運動中に急激な膝折れが生じる。膝がガクッとなる(膝崩れ ギビングウェイ)

④突然の激しい膝の痛みの後に、膝の屈伸が困難になる(ロッキング)などがあります。 

半月板損傷時の「他覚症状」

①膝に腫れ、水が溜まる(関節水腫)

②膝周りの筋肉が萎縮する(大腿四頭筋の萎縮)

③膝が伸びなくなる(膝伸展制限) 

これらの症状に該当すると「半月板損傷」の可能性が高くなります。特にスポーツによる損傷では該当項目が多くなります。一方で、中高年にはロッキングや膝崩れが少ないという特徴があり。慎重に判断しなければなりません。

では、より詳細に鑑別していくには、どうすればいいのでしょうか?

それは、様々ある鑑別テストの特徴を理解して行うことが重要です。

13.半月板損傷を見分けるテスト 

どの疾患においても同じように言えますが、徒手検査には感度特異度というものがあります。

感度Sensitivityとは、ある疾患を持っている人がある検査で陽性になる確率

すなわち、感度とは”病気を発見する能力”のこと

特異度Specificityとは、ある疾患を持っていない人がある検査で陰性になる確率

すなわち、特異度とは”健康な人を病気だと誤診しない能力”のこと

これらの要素を十分認識し、テストに臨むことでより質の高い鑑別が可能になります。
それでは、実際の半月板の検査にはどんなものがあるかご存知でしょうか?
そうです。

① MuMurray test マクマレーテスト

<方法>
一方の手で踵を掴んで膝関節を十分に屈曲させ、他方の手を膝の上に置いて、母指で外側関節裂隙,他指で内側関節裂隙を触診する。内側半月のテストでは、膝関節に外反外力を加えて下腿外旋位にし、膝関節を伸展させながら内側関節裂隙の轢音を確認する。(外側半月のテストは逆の動作)

<陽性反応>
痛みの発生,轢音(クリック音

② Apley test アプレーテスト

<方法>
圧迫:大腿骨と脛骨の間にある半月板に圧迫を加えるので、患者の踵に検者の体重を強めに乗せる。強く圧迫したまま、下腿の内外旋を行う。

<陽性反応>
痛みの発生,クリック音(下腿内旋位の場合=外側半月板 下腿外旋位の場合=内側半月板


以下の表は、各々感度と特異度をまとめたものです。
McMurray test

 

 

 

 

 



Apley test

 

 

 

 

 


最も有名な両者のテストですが、このように表で比較すると一つのことに気づきます。
それは、両者とも共通して感度が低く、特異度が高い傾向です。
これは知っておいて欲しい事実です。

それでは、他の検査はどうでしょう?
最近では「Thessaly test(テサリーテスト)」と「Ege test」という検査があります。これらも同様にみてみましょう。

③ Thessaly test テサリーテスト

<方法>
膝軽度屈曲位(屈曲20°を推奨)にて、足底接地させたまま膝を回旋させる方法

<陽性反応>
関節裂隙の不快感やロッキングあるいはキャッチングを訴える
※ 感度90.3% 特異度97.7

④ Ege test イギーテスト

<方法>
簡単に言うと、荷重位で行うマクマレーテストである。具体的には、踵を3040cm離した立位からゆっくりとフルスクワットを実施する。内側半月板を評価するなら、最大外旋位で屈曲を実施。外側半月板を評価するなら最大内旋位で屈曲を行う。

<陽性反応>
関節裂隙に疼痛もしくはクリックがある場合
※ 感度6467% 特異度8190

 最近では、上記2つのテストのように感度/特異度に優れたテストも考案されています。
ですが、ただ単純に徒手検査の方法を覚えておくのではなく、各々のテストの選び方やテストの特性を知っておくことで使い分けが可能となり、現場での鑑別も精度も上がってくるでしょう。

では、半月板損傷はどのようにして起こるのでしょうか? 
半月板損傷の受傷機転について把握することは、治療を展開していく上で非常に重要になってくるので、一緒に考えていきましょう。

 2.半月板損傷を決める2つの因子

体重の何倍もの負荷を吸収するぐらい半月板の強度(抵抗力)が高いことは容易に想像できます。ですが、運動中の膝にはそれ以上に負荷が生じます。
歩行であれば体重の3倍
ジャンプからの着地動作では体重の10〜14倍の衝撃が膝にかかります。

では、そんな衝撃に耐えうる半月板が損傷する時はどんな時なのでしょうか?

21.よくある受傷場面 

一般的には膝関節の屈曲回旋の動作が加わって生じると考えられています。このような膝関節に加わる機械的ストレスはほとんどのスポーツ活動で生じます。しかし、同じサッカー選手でも発症しない人と、する人がいます。

なぜでしょう? 

そこには、「(局所の)組織の抵抗力」と「負荷量」が関係していることが多いです。
まず、この概念を持って頂く為に右の図をご覧下さい。
この図は、”組織がもつ抵抗力”と”組織にかかる負荷量(外力/内力)”の関係を模式したものです。臨床においては、局所に加わる「負荷」やそれぞれ受け止める「抵抗力」が考える鍵になります。
では、これからこの理論を具体的にどのように考えていくか解説していきます。

①  負荷量が抵抗力を超えた時

右図は一方的に大きな外力が生じた結果、組織のもつ抵抗力を上回った図になります。この場合、一度にかかる負荷が大きい場合と、繰り返す負荷が積み重なり負荷量が増大した場合が考えられます。前者の場合はコンタクトプレーで強い負荷が生じ、組織破壊が生じることが考えられます。いわゆる「急性外傷」の状態です。
また、後者の場合は、運動連鎖の破綻に伴いマルアライメント(knee-inなど)を繰り返した場合に生じる膝周り
の微細損傷の蓄積による損傷が想像しやすいと思います。
この場合の対処法は、負荷量の調節が鍵を握ります。

では、次のような場合はどう考えれるでしょうか???

② 負荷量は変わらないが、抵抗力が相対的に低下した時

①の図と異なり、組織のもつ抵抗力が下がった結果、相対的に負荷量が勝り損傷するケースです。例えば、風邪を想像して見て下さい。風邪は、同じ日常生活を過ごしていても免疫が下がるとウイルスに感染して発症してしまいますよね。これは、「負荷(感染ウイルス)」に対して「抵抗力(免疫)」が下がったことを意味します。
このように、負荷量だけでなく抵抗力そのものが下がり、結果負荷量が上回るケースも存在します。


では、どのような環境になると抵抗力が下がってくるのでしょうか?

それは、局所の組織に対して「①適度な刺激」/「②適度な休息」/「③適度な栄養」の3つのバランスが崩れた場合です。いずれかの要素が不足する。あるいは過剰になると抵抗力を下げる原因となります。これらの考えは非常に臨床に役立つので参考にして見て下さい。
これまで、抵抗力と負荷量という観点からの損傷を考えてきました。しかしながら、これらのことを考慮しても生まれつき痛みやすい半月板を有する方もいることをこれからご紹介していきます。

23.生まれつき痛めやすい人がいる

これは日本人に多い先天性の形態異常で「円板状半月 discoid」があります。

以下にその特徴を述べていきます。

円板状半月 discoidの特徴

  • 日本人を含むアジア人を中心に多い(女性>男性)
  • 発生率は37%である
  • 大半は外側半月板に存在する
  • 通常の半月板と比較し、軽微なストレスで損傷する(組織的強度が通常の半月板より弱い)
  • 両側性であることが多い

これらの特徴は、いくら抵抗力や負荷量のコントロールをしても生まれつき、痛めやすい半月板を有していることもあるので、discoidの可能性があれば、専門機関での適切な対処が必要なことも頭に入れておきましょう。
 さて、これまで半月板の病態から鑑別テスト、受傷機転について解説してきました。ここからは、半月板損傷後の治療について半月板の修復能と手術の適応についてお話ししていきます。

 3.半月板損傷後の治療にはどんな選択肢があるか?

半月板損傷後の治療には、大きく分けて保存療法手術療法の2通りの選択肢があります。
状態に応じていずれかが選択されます。それでは、どんな時に保存療法が選択され、どんな時に手術療法が選択されるのでしょう?

31.保存療法の条件とは?

まず保存療法ですが、適応となる病態は半月板の損傷度合いにより選択されます。

術者によって適応範囲にバラツキがありますが、Henningらによると①10mm以内の損傷 ②遠位の横断裂 ③不完全な縦断裂が適応としています。また、Weissらによると①長さ10mm以下の縦断裂②23mm以下の横断裂では一時的に症状を来たしてもその後症状が無くなることも多いと述べています。

しかしながら、保存療法において大切なことは“半月板に修復能(回復する力)があるか否か”が重要な焦点となります。これら半月板の修復には、栄養や酸素など修復の元となるものが必要です。では、それらはどこから供給されているのでしょうか?

今一度、半月板の栄養供給システムについておさらいしましょう。

半月板の栄養供給システム:⑴ 血行による供給(内及び外側下膝動脈よる供給)

右の図は内・外側膝動脈(上下枝)が半月板への血管分布図です。これらの血管は半月板の辺縁1030%の範囲で毛細血管網を形成し、栄養供給します。(内側半月板1030% 外側半月板1025%)図から見ても分かるように半月板の外縁部より中心に向かって1mm〜数mmの間隔で枝を出していることが分かります。

 

 

さらにイメージを持って頂くために、次の図(右図)を見てください。
これは墨汁を用いて半月板内の毛細血管の血管分布を示したものです。
そうです。中心部にはほとんど血管がないことがわかります。前述したように外縁部は毛細血管からの供給のおかげで栄養や酸素が運ばれてきますが、残念ながら中心部は血管からの供給が見込めないことがよく分かります。
では、中心部はどのように栄養供給がなされるか考えていきましょう。

半月板の栄養供給システム:⑵ スポンジ効果による供給

半月板の中心部の栄養供給は、関節内の滑液から供給されます。ただし、そのシステムには必要な条件があります。それは、荷重や関節運動に伴い関節内に加圧/減圧が生じることです。これらのシステムが作動することで、関節液のある栄養や酸素が半月板内へ送られ栄養供給されます。
医学的にはこれらをスポンジ効果といいます。つまり、半月板の辺縁部は血行によって栄養供給されますが、血行が乏しい中心部はスポンジ効果による間欠的な荷重によって滑液の拡散が生じ、栄養供給されるということになります。

ですので、保存療法において自然治癒可能な範囲の損傷であれば積極的に保存療法を選択しますが、自然治癒が困難な場合は手術適応となります。

知っておくと考え方が変わる情報:半月板の血行について

意外と知られていないですが・・・
元々人間は生まれてすぐの頃には半月板の外縁部も中心部も血流によって栄養供給が賄われていたのです!! これは、実際の解剖学的研究によって証明されています。
しかし、成長とともに生後18ヶ月の頃より辺縁1/3に限局され、50歳を越える頃にはさらに辺縁に限局されます。つまり一歳半から徐々に変性への道のりが始まり、50歳を超えるとより一層加齢に伴う変性が加速してしまいます。

32.手術療法という選択肢

手術にはどんな方法があるか?
①縫合術
②切除術(部分切除/全切除)の大きく2通りがあります。

保存療法でも述べたように半月板損傷の状態によって自然治癒が期待できる場合は、保存療法で経過を見て、自然治癒が期待できない範囲は切除術が適応されていた。ところが、近年血流が少なく自然治癒が期待しにくい範囲(血流の少ないとされる無血行野の横断裂や水平断裂)でも、血糊(専門的にはfibrin clot)を用いて縫合術がなされるなど積極的に半月板温存の取り組みがなされています。
その大きな理由として、半月板切除後には変形性膝関節症への進行スピードが早まるされているからです。

321.半月板全切除術を避けたい理由

半月板の縫合術がでてくる前までは、当たり前のように半月板切除術(部分切除もしくは全切除)が一般的でした。しかし、切除術後の長期成績では軟骨の退行性変化(いわゆる変形性膝関節症への進行)や、大腿骨顆部骨壊死離断性骨軟骨炎など様々なトラブルが続発していることが縫合術を積極的に導入する背景となっているようです。これらの背景により、半月板が有する機能や役割がより重要視され縫合術による積極的アプローチがなされるようになりました。しかしながら、現状の臨床では半月板の部分切除の割合が多いのが実情です。

理由として・・・
①縫合術には、術者の技術が必要なこと(その技術をもつドクターでないと手術できないこと)
②縫合術を行っても、数年〜数十年後には切除術に移行する割合が多いこと
③手術後の復帰には慎重なプロトコールが必要なこと
④切除術に比べ、復帰までの道のりが長いこと
ですので、どちらの選択肢(切除術or縫合術)をするかは? 色々なメリット・デメリットを考慮し臨む必要があります。

 4.まとめ 

 どんな治療を選択するかはクライアント自身です。ですが、クライアントの状態を十分把握し、最善の方向性を示すのは治療者の責任でもあります。
半月板損傷の治療にいたっては、もちろん手術による治療も必要な場合があります。しかし、先々のことを考慮するとできる限り保存療法による症状回復が望ましいでしょう。そこで、重要となるのが”半月板の修復能”と”抵抗力と負荷量を考慮する”ことでした。これらの考え方をみなさんの今後の治療の一助としてお役立て頂ければと思います。

これからも少しでも笑顔になるクライアントが増えるよう最善・最良の医療を提供していきましょう!!

 <引用文献>
・蒲田和芳ら:
膝関節疾患のリハビリテーションの科学的基礎 (Sports Physical Therapy Seminar Series) 
・吉矢晋一ら:膝関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)
吉矢晋一ら:臨床スポーツ医学 vol.31(12) 2014 スポーツ選手の半月板損傷-復帰に向けた診療ガイド-
・園部俊晴ら:改訂版・スポーツ外傷・障害に対する術後のリハビリテーション

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