これだけは知ってほしい!!肩脱臼後の再発を防ぐためのポイント

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いきなりですが、あなたは「脱臼が癖になる理由」を説明出来ますか?

癖になるとは一体何なのでしょうか?

癖であれば気をつければ治るのでしょうか?

残念ながら、治りません。
なぜなら、脱臼した際に、肩の中では様々な役割をもつ組織が壊れてしまっているからです。損傷した組織が放置されれば脱臼の再発は免れません。
では、再発(再脱臼)しないようにするには、どのような対処をとるべきなのでしょうか? これらの疑問を解決するために「肩の脱臼」に関する正しい知識を身につけ、適切な対処法を今からご紹介致します。

1.脱臼した時、肩の中で起こるトラブルとは?

脱臼した時、肩の中ではどのようなことが起こっているか、皆さんご存知ですか。「そりゃ〜靭帯損傷だろ?」「いやいや、骨折だよ」「案外、どこも損傷してないんじゃないの?」などなど、自信をもって答えられない方は多いのではないでしょうか? そんな方は是非、今日のこの日を機にしっかりと脱臼についての理解を深めていきましょう。

1-1.脱臼すると痛めるのは、どこの組織?  

脱臼時に損傷する組織を理解する前に、まずどの方向に脱臼が多いのか知る必要があります。脱臼の方向を理解することは、傷めた組織の把握に非常に役立つからです。

一般的には・・・
肩の脱臼の (9割) 前方脱臼:(1割)後方脱臼します。

では、脱臼時にどの組織が痛むのか?
①靭帯/関節唇/関節包の損傷
肩甲骨関節窩と上腕骨頭を繋ぐ関節唇及び関節包靭帯(特に下関節上腕靭帯:IGHL)の損傷

②骨の損傷
肩甲骨関節窩の骨折
上腕骨頭の骨折後外側損傷(別名hill-sacks損傷 or Posterior Lateral Notch)

④筋肉の損傷
稀に起こる腱板損傷

なんとこれだけの組織損傷が起こっている可能性があります。骨折し、靭帯も剥がれ、筋肉も損傷を受ける・・・これはもう重症ですよね。これだけの事が肩の中で起こっているわけです。もちろん損傷した組織には肩を安定させる役割があるので、これらが破綻することは「不安定な肩」を意味します。では、どの組織が肩の安定性に関与しているのでしょうか? それぞれの役割について解説していきましょう。

12. 「脱臼は癖になる」その原因は、センサーの故障

関節には、円滑な運動を行なったり、関節面から逸脱しない(脱臼しない)ように様々なセンサーを持ち合わせています。(メカノレセプター、固有受容器ともいう)それぞれのセンサーが、各々の刺激(伸張/圧迫etc)に応じて脳へシグナルを出し、脳から筋肉やその他組織に対して司令が出る事で肩を安定させています。
しかし、脱臼した際にはこれらの組織損傷が起きます(前項参照)。唯でさえ、肩は構造的に不安定なのですから、靭帯や関節唇、関節包損傷の影響は非常に大きいと言えます。それでは、こちらの図をご覧下さい。

(肩甲上腕関節における関節唇の関節制動効果:肩のリハビリテーションの科学的基礎より引用)

この図は、関節唇の有無によって、肩甲上腕関節に外力が加わった際の制動力の変化について示した研究です。Lippittらは、関節唇の有無で約20%制動力が低下すると述べています。関節唇だけでこれだけ安定感がなくなるのです。さらに関節包、腱板損傷が加わるとより不安定になることは想像しやすいと思います。

つまり、「脱臼すると癖になる」と言うのは・・・

肩の中の構造的破綻の結果、本来働くはずのセンサーが故障し、必要な時(外力が働いた時に制動する必要のある時)に上手く靭帯や筋肉などでコントロール出来なくなってしまった状態。

これが、「癖」の正体です。

ここまでは、脱臼の際に起こる組織損傷についてや、「脱臼がなぜ癖になるのか」について解説してきました。次の章では、脱臼の回数(初回/反復)によってとるべき対処法が異なり、治療方針が予後を左右します。脱臼のメカニズムを理解できたなら、次は対処法を把握していきましょう

2.脱臼後の適切な対処方法

脱臼した方の多くは、整骨院や病院で脱臼整復を経験する為、その後の処置も適切に行われてます。
一方、自己整復した方、あるいは何かの拍子に元の位置に戻った為専門機関を受診しなかった方は、損傷した組織が放置され適切な処置がなされないまま、再脱臼になってしまうケースもあります。
そこで、これから、、、

  • 初回脱臼した方へ
  • 脱臼を繰り返している方へ

各々に向けた今後の対処法及び日常生活上の注意点を解説していきます。

 21. 初めての脱臼の方(初回脱臼):大事なことは固定方法

初回脱臼した方は、適切な固定法適切な筋力強化(インナー)によって際脱臼を防ぐことが出来ます。ただし、大事な条件があります。

それは・・・
“脱臼によって生じた軟部組織(関節唇、靭帯、関節包)や骨折が比較的軽度の場合”に限ります。
(ちなみに、重度とは関節窩の骨折が大きい場合を指す)損傷程度が、軽度であった場合は適切な固定で再発が予防できるという研究結果もでています。
具体的には従来の固定法:内旋位固定(図1)と新たな固定法:外旋位固定(図2)の比較研究では、前者が再発率42%であったのに対して、後者は26%と報告しており、外旋位固定が有用であると述べています。最新の報告(2015)では、さらに固定法が改良されていますが日常生活とのギャップがあるようです。
以下、引用文献
itoi E,Hatayetyama Y, et al :position of immobilization after dislocation of the shoulder. A cadaveric study. J Bone Join Surg,81-A:385-390,1990 
itoi E,Hatayetyama Y, et al :immobilization in external rotation after shoulder dislocation reduces risk of recurrence. J Bone Join Surg,89-A:2124-2131,2007

従来の内旋位固定    外旋位固定

22. 繰り返し脱臼した方(反復性脱臼):日常生活が見極めのポイント

初回脱臼と比べ、脱臼を繰り返している方は肩の中の組織ダメージが大きく、肩関節が不安定となっています。これは、繰り返すほど肩の中での組織損傷が大きくなり、不安定感が増します。
まだ運動中に脱臼を繰り返す程度ならまだしも、いよいよ”日常生活程度の負荷で抜けるようになってしまっては“時すでに遅し”いくら腱板強化しようが、テーピングでガチガチに固定しようが“脱臼”します。これは、手術適応です。

ですので、脱臼を経験された方!!
なるべく少ない脱臼回数の内に専門機関受診を!! 
※ 繰り返し脱臼をする方は、比較的活動性が高いことが多いです。その為、肩に負荷のかかることを日常的に行なっており、しっかりと日常生活の活動性を把握することが重要です。

3. クライアントに伝えたい日常生活で注意すべきポイント

脱臼と言っても、初回脱臼なのか?反復性脱臼なのか?で対処法が異なる点はお伝えした通りです。では、実際クライアントにアドバイスする場合、日常生活ではどんなことに注意すればよいのでしょうか? それは、“脱臼する方向を理解する”ことで解決します。

31. 脱臼時のエピソードと脱臼肢位を把握する

脱臼のエピソードとして、最も多いのが“転倒”“スポーツ活動”です。年齢層や性別によってエピソードは異なります。比較的年齢が高い女性だと家庭内で“転倒”し脱臼することが多く、若年男性であれば“スポーツ活動”での脱臼が多いようです。
これらの人に共通するのは下の図のような“肩外転、外旋”あるいは“水平外転”の脱臼肢位になることです。

その為、日常生活指導には脱臼肢位に配慮した注意喚起が必要です。
具体的な注意すべき動作は以下の通りです。

  • 手をつく動作

  • 後ろへ手を伸ばす動作

 

  • 患側を下にして寝る など

これら以外にも注意すべき動作はありますが、大事なことはクライアントが脱臼肢位を理解し、日常生活で気をつけるように患者教育をすることです。とは言っても、クライアントは知らずに肩に負担がかかる動作をしてしまいます。意外にこの何気ないことが治療を難しくしていることがあるので、ここもチェックしとくべきです。

32.聞いておくべき3つのスタイル

どんな損傷を受けた組織も適切な対処と期間(自己治癒力)で治癒します。(もちろん手術適応は例外です)しかし、その期間が過ぎたにも関わらず痛みが治まらない場合、考慮しなければいけない要因として“3S”という考え方があります。

3Sとは
ワークスタイル
ライフスタイル
トレーニングスタイル の3つの要素です。

クライアントの日常生活は、このいずれかの3Sに該当します。そこで、肩に負担のかかる動作がないか聴取し、現状把握することで、痛みを助長している動作を発見できるかもしれません。

例えば、若年者の部活生であればトレーニングスタイルの中で“定期的に腕立てをしている”“こっそりベンチプレスしている”“痛めた肩でバックを担いでいる”など無意識の中で負担のかかる動作をしていることが多いのです。また、女性であればライフスタイルの中で家事・育児動作中に肩に負担のかかる動作を行なっているかもしれません。
 その為、治療者として機能的な部分の治療も大事ですが、“組織の治癒を阻害する要因である3S”をしっかり把握することで、きちんと組織の治癒過程がスムーズに行えるような日常生活上のアドバイスも必須となるのです。

4.まとめ

今回は、脱臼というテーマで解説してきました。
脱臼は意外と見過ごされやすく、再脱臼をしてからようやく気づく方も多いのが実状です。しかし、脱臼はしっかりとした初回対応で再脱臼の発生率を下げることもできます。さらに、機能的な部分のみならず、クライアントの日常生活を把握することが最良の治療への第一歩となるはずです。

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