これで納得!!手根管症候群の症状と選択できる2つの治療法

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ふとした瞬間に「ジンジンと手先が痺れる」「チクチクと夜中に手が痛む」
今まで感じたことのない症状、だんだんと強くなっていく痺れや痛み。もう既に家事や仕事に支障をきたし始めている方も多いのではないでしょうか?

もしかすると、その症状は「手根管症候群 carpal tunel syndrome」かもしれません。

「痺れぐらいなら、放っておいてもそのうち治るでしょ!!」なんて思っている方は要注意です。
実は症状が悪化してしまうと、「ペットボトルのキャップが開けれない」「箸が持てない」などの日常生活にまで影響を及ぼすだけでなく、力が入らない状態になってしまうと手術に至るケースもあります。

出来ることなら症状が悪化する前に、適切な機関で診断及び治療を受け、手術は回避したいものです。

そこで今回は、手根管症候群の患者さんが抱える多くの悩みや症状と、医療現場で行われている治療とその効果を分かりやすく解説しました。

記事を読み終える頃には、「私の”今”の状態が一体どんな状況なのか?」「これからどう行動すれば良いのか?」「私の今後はどうなるのか?」といった悩みは解決し、起こすべき行動が明確となるでしょう。

1.手根管症候群とは?

 Fig.1 手根管(全体図)Fig.2 手根管(拡大図)
手根管症候群は、手根管というトンネル内(Fig.1,2)を通過する正中神経がなんらかの原因により「圧迫」を受け、神経症状を呈した状態をいいます。これらの神経障害には、どのような症状を伴うのか、具体的に解説していきます。

引用文献①:プロメテウス解剖学 

1−1.この訴えには要注意!!典型的な3つの症状

手根管症候群のみならず絞扼性神経障害は、どの部位の圧迫でも同様の症状を引き起こします。
そして共通する症状は以下の通りです。

①異常感覚(知覚障害)

神経には主に運動と感覚の2つの機能を有します。その一つが”センサー(受容器)から受け取った信号を脳へ伝えるという機能”です。手根管症候群では、圧迫による障害に伴い図(Fig.4)に示す部分の感覚が鈍くなったり、重度な場合は感覚が失くなってしまうこともあります。
Fig.3 末梢神経支配

特に示指(人差し指)や環指(なか指)、母指(親指)などの指先には異常感覚を感じやすく、一般的にはまず「指先のチクチク感」や「指先の痛み」などが初期症状となってきます。ちなみに、長時間正座した時の足先は典型的な神経症状です。

②筋力低下

神経は筋肉を収縮させたり、弛緩させたりと運動の調整をします。しかし、神経が絞扼されるとその調整機能が低下したり、失われてしまいます。今回の手根管症候群では、手の細かな動きを調整する神経の一つである「正中神経」が障害されます。以下の表は正中神経がコントロールする筋肉の一覧です(Fig.4)
 Fig.4 正中神経 支配筋
これらの筋肉が障害されると「指の対立運動」が困難となります。
具体的には、「つまむ動作」や「握る動作」が障害される為、「箸を使う」「布巾を絞る」「ペットボトルのキャップを開く」などの動作が難しいとの訴えを多く聞きます。

③痺れ

異常感覚の項でも解説しましたが、正中神経領域に生じる痺れも手根管症候群の一つです。ただし、今の状態が痛みなのか?痺れなのか?判断がつきにくい場合があります。痺れによる痛みは、正座した後の足を思い浮かべてみて下さい。とても痺れていて、触れられるとなんとも言えないジンジン感があると思います(笑)それが神経圧迫による痺れや痛みです。

では、上記の典型例の3つ以外にも注意しないといけない訴えはあるのでしょうか?

1−2.隠れ手根管症候群を見逃さない!!その訴えとは?

手根管症候群の典型的な症状は勿論のこと、他にも特徴があります。それは「症状が出現しやすい時間帯がある」ということです。特に「夜間や早朝の時間帯」は症状が強くなることが多いようです。

一方で、隠れ手根管症候群に気づくポイントとして症状が緩和する方法や安楽肢位などは有用な情報となります。例えば「手首を振ると痺れや痛みが楽になる」などのように症状が緩和する方法なども聞いてみると今の病態を知る手がかりになるかもしれません。

1−3.手根管症候群は放っておいても治るのか?

手根管症候群の自然治癒率は32%です(※1)

この数字をあなたはどのように捉えますか?

例えば、テニス肘やゴルフ肘であれば症状の(1年後の)自然軽快率は80〜90%です。これらと比較すると一目瞭然ですね。この結果は「3割は自然軽快する」と捉えて保存療法を選択するのか、「3割しか改善しない」と捉えて手術に踏み切るのかは、あなたの”今”の状態や、症状に伴う生活や仕事の困難度を指標にするといいでしょう。

そこで一つ紹介したいのが、”今”のあなたの状態が保存療法に適するか否かを判断する指標です。以下を参考にしてみて下さい。

“自然軽快する方の4つの特徴”

  • 診断までの罹患期間(病気や症状がでている期間)が短い
  • 年齢が比較的若い
  • 片側性
  • ファレンテスト陰性

“保存療法に適さない方の3つの特徴”

  • 罹病期間が長い(1年以上)
  • 年齢が60歳以上
  • 男性

このように症状が軽快する人や保存療法に向かない人には各々特徴があります。ご自身の状態が、「今どんな状態なのか?」もしくは、「保存療法に適しているのか?」しっかりと自分と向き合って考えてみることも治療にあたる上では大切な役割です。

2.手根管症候群と間違えやすい3つの疾患

手に痺れや痛みを伴うのは、必ずしも手根管症候群だけではありません。
他部位の神経が圧迫されれば似たような症状(筋力低下や痺れ)を伴うので判断に迷う場合もあります。その為、しっかりと原因の違いを理解することも治療方針を定める重要な知識です。自分の身は自分で守りましょう。

肘からの影響:肘部管症候群

肘部管症候群は、手根管症候群と同様に絞扼神経障害(神経が圧迫されて生じる)のひとつです。初期症状に「指の痺れ」を伴うので判断に迷いますが、痺れが出る指の範囲が異なります。
手根管症候群は「人差し指/中指/薬指」に痺れが出るのに対し、肘部管症候群の場合は「小指/薬指」に出現します。また筋萎縮が出現する部位も小指側の筋肉に限定されます。これらは主に「尺骨神経」に関わる症状ですので、ご注意下さい!!

首からの影響:頚椎ヘルニア

意外と多い首のヘルニア。首を後ろや斜め後ろへ反らせるとと腕や手に痛み、痺れが出現します。
症状としては、手足の感覚障害や上肢全体の力が弱いこと、手足の腱反射の異常を認めます。
手根管症候群のような末梢神経が絞扼されている疾患とことなり、神経根の圧迫によって生じる疾患です。その為、感覚障害の出る領域はデルマトーム(皮膚分節)に大凡一致しています。
例えば、C6の圧迫であれば下図のような腕の外側〜親指にかけての神経症状が出現します。しかし、手根管症候群のような末梢神経が圧迫される場合は、一部の部位に限局してくるのが特徴です。

上位の絞扼神経障害:円回内筋症候群

円回内筋症候群の症状は、正中神経が圧迫を受けている部位より手に近い部位に現れ、肘関節の前面の筋肉の痛みが生じ、手のしびれや知覚障害が生じます。この手のしびれや知覚障害は、正中神経が手首周辺で圧迫される手根管症候群と同様、親指、人差し指、中指の3本の指全体と、薬指の親指側半分に認められます。小指には、しびれなどは生じません。
円回内筋症候群も手根管症候群も、同じ正中神経の圧迫により症状が出現しますが、圧迫される部位が異なる為、慎重な精査が必要となります。

3.手根管症候群の治療の実際

保存療法と手術療法 2つの選択肢

手根管症候群の治療には、保存療法と手術療法の選択肢があります。余程の重症例でない限り、基本的に第一選択肢は保存療法というのが定石です。では、保存療法は具体的にどのような治療を行うのでしょうか? 

保存療法①
効果的なスプリント作成 手関節の固定位置をどう工夫するか?

手根管症候群の原因の一つに手根管内の圧上昇があります。その為、症状が強い急性期の時期には圧を軽減することが重要となります。最も適したスプリント作成時の手及び前腕の肢位は、「手関節中間位/前腕回外位」が最も適しています。

なぜなら、以下の研究で証明されているからなんです。
田中らは、背屈位/中間位/掌屈位(fig.5)の3つの異なる手首の位置が手根管内圧にどのように変化するかをリサーチしました。さらに、Luchetti Rらは前腕回内位/回外位(fig.)での手根管内圧の変化をリサーチしました。結果、「手関節は中間位が最も内圧が低くなり、背屈位や掌屈位では内圧が高くなる」ことが判明しました。さらに面川らの結果では、「前腕回外位で最も内圧が低くなり、回内45度で内圧が最も高い」ことが判明しました。
Fig.5 手関節背側中間位型スプリント
これらの研究を元に最も手根管の内圧が低くなる中間位/前腕回外位でのスプリント固定を行うことで手根管内の内圧を上げず、患部の安静を図れ、手根管内の腱の炎症を鎮静化し、症状の軽減を図ることが期待できます。
※ Luchetti R, et al. J Hand Surg, 1994

負の連鎖を断ち切れ!!炎症や痛みが体内環境に及ぼす影響

炎症が生じると、細胞レベルでは間質液がパンパンに腫れて、痛覚が過敏となります。
その為、どんな刺激に対してでも痛みの神経の閾値が下がり疼痛を引き起こしやすくなります。さらに腫れによって、ブラヂキニンといった痛みの物質が局所(患部)に溜まり、より痛みに敏感になり、筋肉の緊張が高くなり、組織間や組織内は癒着や硬結が生じます。また、パンパンに腫れた局所は動かさないこと(不動)で隣接する組織の癒着が進み、滑走性が落ちた分、可動性がない部位が伸ばされ、組織への酸素/栄養供給はなくなってしまいます。一方で、局所の循環が悪いことでさらに痛みや腫脹を生じやすいという負のサイクル(Fig.6)に陥ってしまいます。

Fig.6 負のサイクル
では、どうすれば負のサイクルを断ち切れるのか?
それは、対処療法として痛みの神経の閾値を上げて過敏な痛覚を適正化し、関節の転がり/滑り運動の制限及び滑走性を改善させ、炎症によりパンパンになっている間質液が流れる環境を整える必要があります。では、具体的にどのように実践していくべきか解説していきます!!

保存療法②
スプリント固定と合わせて行うと効果的な運動療法 
〜「体内環境」の視点から考える〜 

一般的には、使いすぎという観点から「(原因)使いすぎ =(対処)患部安静」という目的で固定がなされます。しかし、ただ使う頻度を減らすだけでは炎症は鎮静化しません。

なぜなら、「組織の局所循環を考慮していないから」です。よくある話ですが、固定し安静を取っていたにも関わらず痛みが緩和しない為、ステロイド注射を打ち鎮静化を図るケースも少なくありません。

本来、組織ダメージが加わると生体防御反応が起き、炎症が生じます。炎症が生じると隣接する組織間の圧上昇に伴い癒着が生じます。炎症は24〜72時間以内で治ってくるので、新たな外部刺激が加わらなければ炎症は起きません。しかし、新たに外部刺激を受け炎症の再発を繰り返せば、組織の線維化が起き、関節周りの軟部組織の柔軟性低下が生じます。

手根管症候群の場合は、神経や腱の柔軟性低下を招くだけでなく、痛みに対しての閾値も低下し、軽微な刺激にも反応してしまうようになると、時既に遅しです。

そこで重要な視点が「局所循環を正常化させること」です。
組織修復するには、下図(Fig.7)のように組織修復に必要な材料である「酸素」や「栄養」が動脈管を通して損傷組織内に流入します。そこで使用された材料は、「二酸化炭素」や「老廃物」となり静脈やリンパ管を通して排泄されるというシステムの上に成り立っています。このサイクルが繰り返されることで組織修復が行われます。つまり、固定だけではこの局所循環を改善するための対処は何もなされていないのです!!

Fig.7 局所の組織循環

では、どのようなことを行えば局所循環が改善するのか???

それは隣接する組織を動かし、滑走させる必要があります。そこで今回紹介するのが神経ストレッチ(あるいは神経モビライゼーション)と筋肉のストレッチです。固定に伴い長期的な不動が生じ、柔軟性が低下した神経及び隣接組織との滑走性/伸張性を取り戻すための方法です。
【神経ストレッチ(正中神経)】

「神経をストレッチするなんて、本当に大丈夫?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、安心して下さい。皆さんが普段行なっているストレッチも筋肉以外の組織も同時に伸張している為、無理な方法をしなければ損傷することはありません。正しい方法を守り、実践していきましょう。

手術療法のメリット/デメリット

指の対立運動困難となる程の運動麻痺を伴う重度の手根管症候群の場合や、母指球筋の萎縮が顕著な場合には例外なく手術療法が適応されます。

“手術が適応となる判断基準”

  • 3〜6ヶ月の保存療法で効果がないケース
  • 指の痺れ感や夜間痛などの手根管症候群特有の自覚症状だけでなく、正中神経の運動/知覚機能が低下しているケース

手術療法は、メリットとして短期的な症状改善としては保存療法よりも効果的である。一方で長期的な成績をみると必ずしも手術療法が効果的だとは言い難い。理由として、手根管症候群の再発や靭帯切離に伴う合併症の残存などデメリットとなるリスクを抱えているからである。その為、主治医と方向性を十分に検討する必要がある。必ずしも手術を行えば、症状が改善するかは条件次第なのである。

4.まとめ

今回は、手根管症候群患者が訴える症状や、手根管症候群と間違えやすい疾患について特徴を交えながら解説してきた。また、急性期の炎症の痛みが身体にどのような影響を与えるかを「体内環境」にフォーカスを当てながら、改善するための具体例を提示した。手根管症候群は手術療法のみならず、保存療法でも工夫次第で手術を回避できる可能性を秘めている。手根管症候群の治療の方向性について悩んでいるクライアントやセラピストの一助となれば幸いである。

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