これで怖がらず対処できる!深部静脈血栓症のリハビリ進め方と見分け方

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深部静脈血栓症。別名エコノミークラス症候群。
元日本代表サッカー選手の高原直泰選手が患ったことは有名な話。

飛行機の長期移動の他にも、地震災害後の集団避難生活や車内泊。手術後や長期臥床などによるいわゆる『不動期間』の延長(=血流の停滞)が大きなリスク要因のひとつとなっていて、老若男女おこってしまう可能性がある深部静脈血栓症

さて、そんななか私達治療者は医師がいない現場に携わる場面の中で、どこまでリスク管理ができるでしょうか??

例えば、訪問リハビリや接骨院、スポーツ現場において、

もし仮に深部静脈血栓症が形成されてしまっている方に対して、「むくんでいるから・疲れているから、ドレナージュ・マッサージを行おう!」と安易に選択してしまうことで、『肺塞栓』のような命にも関わる重大疾患を罹患してしまう可能性もなくはないのです。

そのようなことがおこれば、対象者の方の体調はもちろんのこと、自身が仕事を続けられなくなってしまう可能性もあります。それは医療従事者として、もっとも避けなければいけないことです。

いわゆる『レッドフラッグ』といわれる、私達治療者が介入できないもの。介入することでかえって、悪くなる可能性が高いもので、医療機関での適切な処置が必要な深部静脈血栓症。

今回は深部静脈血栓症の見きわめ方、また深部静脈血栓症の有無によるリハビリ内容の違いについて、現場で活かせる様にまとめました。

1.これで防ぐ!深部静脈血栓症の症状とフィジカルアセスメントを捉えよう

1-1簡単に見分ける!深部静脈血栓症の症状とフィジカルアセスメント

深部静脈血栓症は自覚症状がないこともあるといわれています。
そのため、頭の片隅に『おや。いつもと○○さん様子が違うかな?』というアンテナを張ることが重要となってきます。

フィジカルアセスメントは、
左右差のある大腿から遠位にかけた発赤、腫脹、浮腫、痛み

浮腫に関してはただ『むくんでいるか』のみでは不十分な面があります。
跳ね返る浮腫(顕性浮腫:pitting edema)か、陥没した浮腫(non-pitting edema)かをみて、静脈性が原因の浮腫であれば陥没した浮腫(non-pitting edema)と判断できます。

・下肢の色調変化(赤、または紫色)は、立位や下垂位で明確となり、挙上位で速やかに改善しやすいとされています。
 ・爪先のチアノーゼの有無
・下腿部の圧痛は下腿筋内静脈血栓ではより限局性。
・表在静脈の怒張

(・Homansテスト陽性) 足関節背屈を他動的に行い、痛みの有無をみるという有名なテストではありますが、信頼性には欠ける報告もあげられていて、Dr.Homan自身も正確性の欠如を認識しているとの報告もあります。

上記の症状からさらに、リスクの高い要素が眠っていないかというアンテナを張るべき項目を確認していきましょう。

1-2 深部静脈血栓症のリスクが高い対象者を把握しよう!

  
引用画像:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)

“脱水のフィジカルアセスメント”

ハンカチーフサイン:胸部の皮膚をつまんで離しても10秒以内に跡が戻らない場合陽性となり、脱水を疑う。

舌の視診:舌の正中線がある・亀裂がある・全体的に乾燥しているかということで判断。舌には水分を貯留できる皮下組織がないため、水分不足など反映されやすい。

深部静脈血栓症の見分け方・高リスクの把握を行い、疑いがあるのであれば、早期に医療機関で検査を受けることが重要となってきます。

深部静脈血栓症の最大の合併症は『肺塞栓』です。肺塞栓は命にも関わる疾患のため、理解しておくことは医療人として必須です。

2.知らなかったではすまされない!!恐怖のレッドフラッグについて

2-1レッドフラッグの肺塞栓について

レッドフラッグとは直訳で(危険・警戒・停止信号としての)赤旗と訳されます。

深部静脈血栓症において一番怖い合併症は、『肺塞栓症』です。

肺塞栓症とは、肺動脈に血液の塊(血栓)が詰まる病気のことです。深部静脈血栓は9割以上は下肢の静脈内にできるといわれています。 
それが血液の流れに乗って右心房、右心室を経由して肺動脈まで運ばれてきて、肺塞栓症の原因となります。
別名「エコノミークラス症候群」といわれていますが、エコノミークラスに限らず、ビジネスクラスでも生じること、また航空機に限らず長時間の移動の場合には、自動車、列車、船舶などでも起こりうるため、旅行者血栓症とも呼ばれています。

肺塞栓症は急性期での的確な治療が必要で命に関わる疾患です。


 

 引用動画:2分で分かる医療動画辞典 ミルメディカル

なので、疑いがあるならば、しっかりとした医療機関での検査が必要となってきます。

レッドフラッグを見逃さないためには、問診とフィジカルアセスメントが重要です。

問診では、
『現在の症状』
『現在までの経過』
『長距離移動や車内泊などのきっかけの有無』
『リスクが高い既往の有無』
などの把握がまずは必須となってきます。

肺塞栓の症状は
 ・労作時息切れ、呼吸困難
・低酸素血症(Spo2の低下)の進行に伴い、チアノーゼ、および過呼吸、頻脈
・胸痛
・乾性咳嗽
・血痰
・失神
があげられます。

2-2 深部静脈血栓症の疑いがあるならば、禁忌を思い出そう!!

結果から述べると・・・

『マッサージは禁忌』です。

予防のためにはマッサージは有効な一つなのですが、仮に下肢の静脈に血栓ができている状態でマッサージをすると、その血栓を移動させ、肺塞栓症を誘発する可能性があるからです。

第1章のリスクに加え、

安静解除直後の最初の歩行時、排便・排尿時もリスクが高いといわれ、

突然の胸痛・Spo2値90%以下・呼吸音が正常であれば、肺塞栓が強く疑われるため、できる限り迅速に救急車、医療機関への搬送が急務となります

3.深部静脈血栓症の有無でリハビリを変える2つの実践方法

深部静脈血栓症の有無において、リハビリの介入が変わってきます。
ここでは予防編と実際に起こってしまった入院・治療が必要なケースにわけてお話ししていきます。

3-1 深部静脈血栓症のないリハビリ 予防編

さて、ここでは深部静脈血栓症の予防編です。
これはあくまでも、『血栓がない』という状態での介入です。

上記で述べたように、血栓がある状態に対してのマッサージは禁忌となります。

・運動

まず最大の予防は『歩行/運動する』ということです。
それは、静脈血栓の形成は、Virchowの3徴(血液の停滞・血管内皮の損傷・血液凝固能亢進)が密接に絡み合って血栓がされます。

この『血液の停滞』を防ぐには筋肉を動かし、静脈の流れをよくすることです。
そのため、「長時間同じ姿勢でいることを避ける」という、『不動』の状態をできる限り防ぐことが重要となってきます。

 

具体的な運動は、厚生労働省が勧めている運動を紹介します。

    引用画像:厚生労働省

 

大事なことは下肢にできやすいとされる深部静脈血栓を防ぐために下肢・特に下腿部の運動をするというところに重きをおいています。

そのほかにも局所の循環をよくするという意味合いで紹介する足底部、足趾組織間リリースです。

・水分

上記で先述していますが、Virchowの3徴のひとつである『脱水=血液凝固能亢進』がおこると深部静脈血栓症のリスクが高まります。

そのため、適度な水分が必要となります。

ひとつ注意点としては、お酒は身体の水分摂取にはなりえません。なぜなら、アルコールそのものに利尿作用があるため、お酒を飲めば飲むほど体から水分が失われてしまうからです

ここまで読んでいればわかると思いますが、特に飛行機や、車内での狭い環境での『不動』の状態での『飲酒』はリスクが高くなることを意味します。

・物療・道具

弾性ストッキングまたは弾性包帯による圧迫療法は、主として下腿の筋ポンプ作用の増強および、微小循環の改善を目的として用いられます。

すなわち、筋の圧迫により筋収縮時の静脈圧迫が増強して直接的に筋ポンプ作用が増強します。また静脈の圧迫により静脈径が縮小して逆流の現象を引き起こしたり、不全に陥っている弁の接合が改善します。さらには微小循環領域において圧迫により毛細血管の還流を改善し浮腫が軽減します。
①弾性ストッキング
簡易で安価な部分がメリットです。
低リスク、中リスクの方には静脈血栓症の優位な予防方法を認める一方で、高リスク以上の方では単独使用での効果は弱いといわれています。
②間欠的下肢圧迫装置
間欠的下肢圧迫装置は、足部や腓腹筋部に装置をセットし、圧力をかける装置と、下腿から大腿にかけてゆっくりと加圧する装置がある。  具体的には以下の様なイメージです。

  引用画像:日東工器株式会社

むくみ予防やマッサージ用品として、一般家庭用で安価なものも売られています。

予防編の次は深部静脈血栓症ができてしまったケースについてに移ります。
これは実際に医師の診察により入院/治療が必要になった場合にどのようなことに注意してリハビリを進めていくかというところをまとめていきます。

 3-2 深部静脈血栓症のリハビリ 対処編

当たり前ですが、医師の指示の基で安静度を随時変更していくことは言うまでもありません。

・患側下肢の安静度(下肢運動の可否)

・離床の安静度(ベッド上・車椅子・立位/歩行)がリハビリを行う上で最重要となっていきます。

目的としては
・筋力の維持・改善(まずは患部外)
・関節可動域の維持・改善
・基本動作能力の維持・改善(安静度にあわせ)となっていきます。

急性期:

現在のところ急性期における理学療法の是非に対する結論はでていないのが現状です。

一つは、弾性ストッキングを使用すると、圧迫により血栓を遊離させ、肺塞栓のリスクが生じるという報告がある一方で高度圧迫圧のストッキングを着用し、早期より積極的に下肢の運動を行うことで肺塞栓のリスクを増大せず、逆に痛みや浮腫の改善が優位に早いという報告もあります。

深部静脈血栓症急性期における運動療法や圧迫療法に関しては、臨床的重要度や肺塞栓へのリスクを総合評価して決定し、注意深く観察し、離床の段階付けを踏んでいく必要があります。

その上で、バイタルサインの変動・自覚症状の有無・フィジカルサインを確認しながらリハビリを進めていきます。

亜急性期・慢性期:

急性期を過ぎてからの治療は、浮腫や痛みの改善のみならず、血栓症の再発予防ならびに血栓後遺症の発生や重症化を予防を目的とします。

静脈圧の亢進による下肢の浮腫を防ぐために弾性ストッキングの圧迫圧の設定が重要です。

・足関節部での圧迫圧30mmhg台が第一選択

ー圧迫療法時の注意点ー
・動脈血行障害のある症例では圧迫により血行障害をおこす可能性があり。特に糖尿病患者などでは動脈疾患が潜んでいる可能性があり注意が必要。
・下肢の蜂窩織炎、血栓性静脈炎などの急性炎症の併発症例においては炎症を増加させる可能性があり。
・うっ血性心不全や急性心筋梗塞の症例においては静脈還流の増加により心不全の増悪の可能性があり。

“弾性ストッキングはいつまではき続ければよいの?”

現状では具体的な目安はありません。
静脈機能の改善の程度を考慮して、症例ごとに決定する必要があり、症状の強い症例や静脈機能の推移によっては圧迫圧の高いものに変更し、継続して使用することが望ましいとあります。

安静度の重要性を述べてきました。
次は、リハビリを行ううえで把握しておくべき検査結果や治療法を説明していきます。

4.深部静脈血栓症のリハビリを行う上で知っておくべき基礎知識4選

4-1 血液データ

・血液ガスデータ

低酸素血症、低二酸化炭素血症、呼吸性アルカローシスが特徴的所見です。

・Dダイマー

Dダイマーはプラスミンによってフィブリンが分解された酵素の集まりで血栓の存在を反映します。この検査は測定法や試薬により性能に差があるといわれています。その中でも深部静脈血栓症においてはELISA法は高い感度を有していて、DIC診断で求められる検査性能とは異なります。

Dダイマーは基準値より高値であれば、血栓があることを疑います。しかしDダイマーが高値なだけでは不十分となります。

そのため、Dダイマーが標準値内であれば、血栓がないという診断の除外のひとつに利用されます。

4-2 薬物療法

①抗凝固療法

②線溶療法があります。

具体的な治療目的としては血栓、塞栓の溶解を促進し、血栓の局所進展を抑制し、血栓の再塞栓化を予防することとなっています。

抗凝固療法の最大の合併症は『出血』です。

そのため、リハビリ中で注意することは、どこかにぶつけてしまうことはもちろん、脆弱性のある皮膚の高齢者などでは関節可動域訓練時や動作介助時の把持でも皮下出血がおこってしまう可能性があるため、細心の管理が必要となってきます。

4-3 画像診断

主な画像診断検査は
①超音波検査
②CT検査
③血管造影
④RI(血流シンチ)があります。
目的としては、血栓の有無・部位・大きさを特定し、経過的にみることで血栓の状態を把握し、治療効果をみていき、離床・運動の可否を決定する要因の一つとなっていきます。

4-4 手術療法

①外科治療
②カテーテル治療
③下大静脈フィルターがあります。
原則としては抗凝固療法が基本といわれています。

5.まとめ

・明らかに左右差のある腫脹・浮腫・痛み・呼吸苦・Spo2低下などがある場合はレッドフラッグを疑い、医療機関受診を勧めることも重要である

・旅行中や同一姿勢をとらざるをえない場合は運動・水分補給がとても重要である

・深部静脈血栓症のリハビリを進めていく上で、医師と密にコミュニケーションをとり、検査結果も考慮しながら進めていくことが重要である

 

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